経営をしていると、どうしても「売上を伸ばさなければ!」という気持ちになります。実際、売上が増えれば、会社の規模が大きくなり、外部からの評価も上がるでしょう。しかし、売上を追いかけるだけでは、経営は決して安定しません。
大切なのは「売上」ではなく「利益」。
なぜなら、どれだけ売上があっても、利益が残らなければ会社は成長しないどころか、いずれ倒れてしまうからです。
今回は、売上至上主義の落とし穴と、利益を重視した経営のポイントについて詳しく解説します。
売上が増えても利益が増えなければ意味がない
売上を増やすことは決して悪いことではありません。しかし、売上を追い求めるあまり、利益がほとんど残らないビジネスになってしまうケースが多くあります。
例えば、以下の2つの会社を見てみましょう。
会社 | 売上 | 利益率 | 利益額 |
A社 | 1億円 | 2% | 200万円 |
B社 | 5,000万円 | 10% | 500万円 |
A社は売上が1億円もありますが、最終的に手元に残る利益はたったの200万円。一方、B社は売上が半分の5,000万円ですが、利益率が10%あるため、手元に残るお金はA社の2.5倍です。
売上が大きくても、利益率が低ければ意味がありません。
むしろ、無理に売上を増やそうとして、利益が圧迫されることもあります。
では、なぜ多くの企業は売上ばかりを気にしてしまうのでしょうか?
売上至上主義の落とし穴
「売上を伸ばせば、会社は成長するはずだ!」という考え方には、大きな落とし穴があります。売上だけを追い求めると、以下のようなリスクが発生します。
① 利益率の低い案件を受けてしまう
売上を増やすために「とにかく受注しよう!」と考えてしまうと、利益率の低い仕事や値下げ競争に巻き込まれる可能性が高くなります。
例えば、1件あたりの利益が少ない取引を増やしても、結果的に労力ばかりかかって利益はわずかという状況に陥ることがあります。
② 過剰な広告費・販促費の投資
売上を伸ばすために、大量の広告を出したり、大幅な割引キャンペーンを実施したりする企業は多いですが、その結果、販促コストが膨らみ、利益が圧迫されることがあります。
特に新規顧客を獲得するための広告費は高騰しがちで、顧客単価が低いと「広告費を回収する前に次の顧客を探さなければならない」という悪循環に陥ります。
③ キャッシュフローが悪化する
売上は増えていても、支払いサイトが長い取引が増えたり、仕入れや設備投資にお金を使いすぎたりすると、資金繰りが苦しくなります。
「黒字倒産」という言葉があるように、利益が出ていてもキャッシュフローが悪化すれば会社は潰れます。
売上がどれだけあっても、手元にお金が残らなければ意味がありません。
利益を重視する経営のポイント
売上よりも利益を重視するためには、次のような視点が重要になります。
① 利益率の高い商品・サービスに集中する
会社の利益をしっかり分析し、利益率の高い事業や商品にリソースを集中させることが重要です。
「売上は大きいけれど、利益率が低い事業」よりも、「売上はそこそこでも、利益率が高い事業」を選ぶほうが、結果的に安定した経営につながります。
② コスト管理を徹底する
売上を伸ばすだけでなく、無駄なコストを削減することも重要です。
特に以下のような固定費を見直すだけで、利益が大きく改善することがあります。
・オフィス賃料 → 必要以上に広いオフィスを借りていないか?
・人件費 → 適切な人員配置ができているか?
・システム費用 → 使っていないツールやサブスクリプションがないか?
③ リピーターを増やす
新規顧客の獲得には広告費がかかりますが、リピーターを増やせば、低コストで安定した売上を確保できます。
・既存顧客向けの特典を充実させる
・アフターフォローを強化する
・サブスクリプション型のビジネスモデルを導入する
こうした施策により、利益率の高い売上を確保しやすくなります。
④ キャッシュフローを意識する
売上が増えても、入金が遅く、支払いが早ければ資金繰りが苦しくなります。
・取引先との支払い条件を改善する
・不要な在庫を抱えないように在庫管理を徹底する
・過剰な借入をせず、無駄な金利負担を減らす
こうした工夫をすることで、キャッシュフローを健全に保つことができます。
まとめ:売上よりも利益を優先しよう
「売上=会社の成長」という考え方は、多くの経営者が持っています。しかし、実際には売上が増えても利益が出ていなければ、会社の未来は明るくありません。
売上を伸ばすことが目的ではなく、利益を最大化することが目的であるべきです。
利益を重視する経営のポイント
・利益率の高い事業に集中する
・無駄なコストを削減する
・リピーターを増やして安定した売上を確保する
・キャッシュフローを改善する
この視点を持つことで、売上至上主義から抜け出し、利益をしっかり確保しながら成長できる経営が実現できます。
「売上を増やす」ではなく、「利益を最大化する」経営にシフトすることが、会社の未来を明るくする一番の方法なのです。